ソフトウェアレビュー:Turbolinux FUJI Version 11

Turbolinux FUJI Version 11 速報レビュー



※ 製品に含まれない製品に関してはユーザ自身の手で入手/導入をする必要があります。



珠玉のソフトウェア 連載 第二回

■ Turbolinux FUJI Version 11 Product Review. ■

− あなたの FUJI は、何色ですか?
Turbolinuxが2年ぶりに放つ、国内デスクトップLinuxの頂上を狙うアグレッシヴな最新Linux OS −

文:電脳ぺんぎん(HMX.NET)   掲載環境:筆者私物




 TurbolinuxがデスクトップLinuxの概念を大きく覆したのは、今から2年前。世に出た製品は「Turbolinux 10 Desktop」(以下TL10D)だった。操作性やアプリケーション互換、ファイルシステム互換などWindowsとの高度な親和性「High Windowsability」は初めてLinuxを使う多くのユーザに興味を持たせ、国内デスクトップLinux市場の頂点に立ったのは記憶に新しい。
 あれから2年。数回のマイナーバージョンアップ(Turbolinux 10 F...、Turbolinux Home等)で培ったデスクトップLinuxトレンドと最新ソフトウェアをひっさげ、あのアグレッシヴなOSが待望のメジャーバージョンアップをした。
 待望の新OSの名前は「Turbolinux FUJI Version 11(以下「FUJI」)」。
 日本最高峰の山「富士山」の名を冠する「FUJI」には、国内デスクトップLinuxの最高峰を目指したいというTurbolinuxの意気込みを感じ取ることができる。
 製品構成やアップデートを柔軟に、そして最新のプロダクトを同梱したTurbolinuxの最新OS「FUJI」。今回は「FUJI」の新機能と関してまとめてご紹介しよう。
 TL10シリーズの後継でFUJIを使いたい、または利用を検討している読者の参考になれば幸いである。

Turbolinux FUJIの構成

fuji_pkg.jpg

 FUJIは5枚組となっており、1枚目と2枚目は「FUJIインストールCD」、3枚目が「FUJIコンパニオンCD」、4枚目と5枚目はソースコードの収録された「ソースCD」となっている。
 SRPM(ソースコードをパッケージングしたRPM)が収録されたCDが付属するのはTurbolinux 10D(以下TL10D)以来であるが、自前でRPMパッケージを作成する人にはTL版SRPMを探す手間が省けるため、非常にありがたい。
 1枚目と2枚目には標準で導入されるバイナリが含まれており、下位版の「Turbolinux FUJI Basic」と内容は同様である。FUJIとFUJI Basicの違いは3枚目のコンパニオンCDにあり、FUJIコンパニオンCDには各種商用アプリケーションと開発用(devel)パッケージが同梱される。
 FUJIには目立ったアプリケーションや機能(商用アプリケーション含む)として以下が実装される。

 ・リコーTrueTypeフォント(JIS第三・第四水準をサポート)
 ・日本語入力ソフト ATOK for Linux
 ・Windows互換ミドルウェア David
 ・Adobe Reader 7
 ・Flash Player 7
 ・Turboアンチウイルス
 ・RealPlayer 10
 ・Turboメディアプレーヤー
 ・StarSuite 8
 ・キヤノン社製プリンタドライバ
 ・エプソン社製プリンタドライバ
 ・Sun Java2 Platform Standard Edition 5.0
 ・スキャナソフト EPSON Image Scan! for Linux
 ・fullflex EG無償版
 ・総合デスクトップ検索「Turboサーチ」
 ・暗号化フォルダ機能
 ・Turboネットスイッチ
 ・Windowsネットワーク・Linuxネットワークの強化実装
 ・標準文字コード「UTF-8」の採用
 ・gtkpod(iPod用通信ユーティリティ)
 ・各種開発用パッケージ(いわゆるdevelパッケージ)

 FUJIは上記のようなアプリケーションや機能が標準で添付される。おなじみのgtkpodやTurbo Media Playerなども機能強化されておりありがたい限りだ。しかしながら、以前のバージョン(Turbolinux 10F...)に付属していた「PowerDVD for Linux」が同梱されていなくて残念に思うユーザもいるだろう。しかし安心して欲しい。今回、Turbolinuxは新ツール「Turboプラス」で別途提供するソフトウェアを「プラグイン」という位置づけにし、基本OS以外のプラグインは必要に応じて購入して拡張することができるというアプローチを採用した。不要なアプリケーションが同梱され、「あれが欲しい、これが欲しい」というユーザの要求に即時かつ柔軟に応えつつ、OSそのものの価格が高価にならないようにとのTurbolinux側の配慮であろう。もちろん、以前のバージョンに付属していた「PowerDVD for Linux」はこのプラグイン第一弾として登場している。「Turboプラス」および上記アプリケーション、新機能のいくつかは後ほど紹介しよう。

FUJI動作推奨環境
 Turbolinuxが推奨するFUJI動作環境は以下のようになっている。

 ・プラットフォーム:IBM PC/AT互換機
 ・CPU:PentiumIII相当、またはそれ以上
  (SMP/HT/DualCoreサポート、x64プロセッサは32-bitで動作可能、動画再生時は1GHz相当以上プロセッサ推奨)
 ・メモリ:64MB以上(256MB以上推奨、動画再生時は512MB以上推奨)
 ・HDD:3GB以上のIDE/SCSI/SATAディスク(5GB以上推奨)
 ・ビデオカード:X.Org 6.8.2に対応したものでVGAの解像度以上(StarSuite使用時はSVGA 8-bitカラー以上推奨)
 ・マウス:USBまたはPS/2接続のポインティングデバイス
 ・その他:1.44MB FDD(USB接続は設定変更によりフル機能使用可)、CD-ROM(ATAPI/SCSI)、Ethernetアダプタ
 ・ストリーミング再生にはブロードバンド回線が必要

 以上のスペックを満たしていれば非常に快適に使用できる。FUJIを標準仕様で快適に使うための目安としては、Windows 2000やWindows XPが動作するような機種ということになるだろう。もちろんそれを満たさない環境(PentiumIII-500MHz程度)でも動画再生など重たい処理をさせなければ十分使うことは可能であるし、デスクトップ環境をより軽快に動作するxfceにすることによって低スペックマシンでも快適に動作が可能だ。そのあたりは各自自己責任でチューニングを行い、試してみても良いだろう。

FUJI主要コンポーネント
 付属のアプリケーション以外には、主要コンポーネントの大幅な差し替えが目立った。FUJIの主要コンポーネントを以下に示す。

 ・Linux kernel 2.6.13
 ・glibc 2.3.5
 ・X.Org 6.8.2
 ・gcc 3.4.3
 ・rpm 4.4.2
 ・KDE 3.4.2
 ・GNOME 2.10

 kernelが2.6.13にKDE、GNOMEがそれぞれ3.4.3、2.10へアップデート、GNU Compiler Collection (gcc)も3.4.3に大幅アップデートされた。
 特記すべきはX.Orgを採用したことだろう。TurbolinuxはいままでXFree86 4.3.0を採用していた(XFree86 4.3.0に含まれないX.Orgからのドライバの実装/アップデート/不具合解消を独自で行ってはいたが、機能そのものはXFree86 4.3.0のままだった)。
 XFree86は4.4.0から一部ライセンス条項が変更になり問題を引き起こしたため、XFree86 4.4.0を採用せずX.Orgに移行したものだと思われるが、X.Orgを取り入れたことによりcomposite等の最新機能がXFree86と比較して多く取り入れられているというメリットもある。また、X.Orgへの移行により、開発・保守の面でのメリットも大きいと思われる。もちろんX.Orgになったからといって別にユーザ側で特に対応する必要もなく、普通にXサーバを利用するだけでよい。

特記すべき機能

・Windowsを意識したデスクトップ



 前バージョンのTL10Dでも数々の面で「High Windowsability」を実践してきたが、FUJIではデスクトップがさらにWindowsを意識した仕様になっている。KDEボタンもWindows XPをかなり意識しており、既存のWindowsユーザが外見から拒否反応を示さないよう気を遣ったTurbolinuxの細かな配慮が見て取れる。もちろん、KDEに慣れたユーザは再設定することによりKDEそのままのユーザインターフェイスを利用することができる。

・JIS第三・第四水準漢字のサポート

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 細かな点であるが、今回は第三水準、第四水準の漢字がサポートされた。今まで入力が面倒だった「森鴎外」の「鴎」などの漢字が違和感なく入力できるようになったことはありがたい。ATOK側の変換機能は標準では有効ではないので、ATOK for Linuxプロパティの「辞書・学習」の項目にて「ATOK17第三・第四水準漢字辞書」にチェックを入れれば第三・第四水準の漢字を利用することができるようになる。

・暗号化フォルダ


 見慣れないフォルダが見える。これは「暗号化フォルダ」と呼ばれる新しい機能だ。自分のユーザでログインして、作業が終わったらログアウトすると行った「正しい使い方」をしているユーザであれば問題がないが、自動ログインなどで同一ユーザを使い回す可能性のあるデスクトップLinuxでは、今まで簡単にアクセスを制限させることが難しかった。今回実装された暗号化フォルダには簡単にアクセス制限をかけることができ、仮に同じユーザを使い回した場合に極秘資料が漏洩するなどといったリスクを下げることができるようになった。暗号化フォルダはオプションで暗号化レベルや種類を変更することができるので、好みに応じて設定すればよいだろう。

・総合デスクトップ検索「Turboサーチ」

fuji_turboserch_s.png

 FUJIには強力な総合デスクトップ検索機能が実装された。この機能はオープンソース全文検索機能の Namazu をベースにTurbolinuxがFUJI用にカスタマイズ/実装したものである。検索ならKDEの検索機能やfindやgrepを駆使すればいいじゃないかと思われる読者もいるかもしれないが、Turboサーチにはそれらとは異なり、圧倒的な検索速度を誇る。前者がすべてのファイルを総なめで検索するのに対し、Turboサーチは文法的に検索対象を解析して分割しインデックスを作成する。そのため、ファイル数が増えればインデックス作成に時間がかかるものの、いったんインデックスを作成してしまえば検索は非常に高速である。そのあたりの理屈はデータベースの理屈を知っていれば理解してもらえると思う。時間のかかるインデックスの作成は定期的に実行できるので、PCを使用していないときにでも実行すれば常に最新の検索結果を参照できるのだ。
 使い方は至って簡単。タスクバーの検索フォームに検索キーワードを入れればこの通り。その検索速度たるやKDEの検索やgrepはおろか、Windows標準の検索速度の比ではない。

・Windows互換ミドルウェア「David」

fuji_david.png

 タスクトレイにDavidという文字の入ったアイコンが見える。Davidは SpecOps Labs の製品で、Windows用アプリケーションをLinux上で実行させるソフトウェアである。TurbolinuxはSpecOps Labsとの間でDavidの独占販売契約を締結し、FUJIに実装した。Davidが提供するWindows互換環境は、オープンソースソフト「wine」の成果物と独自開発の技術により実現されている。Davidはwineの成果物を実装してはいるが、Win32 APIの再実装を最小限にしているなど、Windows環境の完全な再実装を目標としているwineとはアプローチが異なっている。そのため、Davidにはアプリケーション共通のWindows互換機能を提供するDavidエンジンと、アプリケーション毎に提供されるDavidイネーブラというプラグインが提供され、イネーブラが提供されたWindowsアプリケーションは極めて高い互換性を持って動作するという特徴がある。FUJIではDavidエンジンとWindowsアプリケーションの導入を支援するツールと、イネーブラが提供される。イネーブラはTurbolinuxが独自に検証し、不具合なく動作するよう手を加えたものが提供されており、現時点ではMicrosoft Officeのイネーブラが提供されている。イネーブラがないとアプリケーションの導入や実行ができないが、逆にいうとイネーブラが提供されたものは不具合なく動作するので、安心して使えるメリットがある。イネーブラの種類が増えれば稼働するアプリケーションの数も増えることから、今後イネーブラの数は増えるのではないかと思われる。
 なお、非公式ではあるがFUJI付属のDavidでInternetExplorerを動かすことも可能だ。興味のある方は自力で調べた上で自己責任において試してもらいたい。

・バージョンアップされたTurbo Media Player

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 Kaffeineベースの人気アプリケーション「Turbo Media Player」がバージョンアップされ、さらに高機能になった。Turbo Media Playerは動画コーデックにxeine-libを採用しており、ライブラリの追加で再生フォーマットを柔軟に増やせるのが強みだ。もちろんマイクロソフトからライセンスを受けTurbolinux独自に実装したWindows Media File(以下WMF)デコードライブラリにより、ブロードバンドコンテンツで多用されるWMFにも対応しているのが強みだ。
 xineの各パラメータはほぼ日本語化されており国内向けのユーザを強く意識したできあがりになっている。

・人気のFirefox、Thunderbirdを搭載

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 いままで標準ブラウザと電子メールクライアントにはインターネットスイートである「Mozilla」が搭載されていたが、FUJIではこれを刷新。人気のオープンソースインターネットブラウザ「Firefox」と、同じく人気のオープンソース電子メールクライアント「Thunderbird」が同梱された。この2つのソフトはユーザからの要望が多かったにもかかわらずいままでTurbolinuxから公式のパッケージは提供されていなかったため、使用するにはMozilla公式サイトからダウンロード、有志作成の私家版パッケージの利用、または自分でソースからビルドする必要があった。今回FUJIにて正式に実装されたことにより別途導入せずとも使用できるようになった。人気アプリケーションであるだけに、FirefoxとThunderbirdのの標準実装を喜んでいるのは筆者だけではないはずだ。

・ネットワーク一発切替「Turbo NetSwitch」

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 TL10DシリーズではCUIベースのアプリケーションとして提供されていた「turbonetcfg」が待望のGUI化だ。新しくなった「Turbo ネットスイッチ」ではマウスでクリックするだけでネットワークを簡単に切り替えることができる。上記の画像では内蔵無線LANと内蔵有線LANを別に登録して切り替えるよう設定がしてあるが、このようにオフィスでは有線LANを、喫茶店で無線LANを、といったようにノートパソコンで使用する際には非常に重宝する機能だ。

・改善されたアップデート機能「Turboプラス」

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 今まで「Turbo Update」と呼ばれていたアップデート機能が改善され「Turboプラス」となった。Turboプラスでは各種アップデートパッケージの導入の他、前述のプラグイン方式で別途提供されるソフトウェアを選択して導入することができる。プラグインは有償で提供されるものもあり、利用する場合には別途購入の手続きが必要であるが、不要なソフトが多く同梱されてOSそのものの価格が上がってしまうよりは、基本機能を安く提供し必要に応じてソフトウェアを購入したほうがユーザにとって負担は少ない。ある意味賢いアプローチといえよう。なお、Turboプラスは後述の「ライセンス認証」を行わなければ利用できないので注意が必要だ。

・ライセンス認証機能の実装

 FUJIではライセンス認証機能が実装された。ライセンス認証とは行っても他社OSやアプリケーションのようないかがわしいものではなく、単にTurboプラスを利用するための手続きのひとつという感じが強い。本体に付属しているシリアル番号とメールアドレスを入力するだけで簡単にライセンス認証が終わる。初回ライセンス認証時は自動でライセンスファイルを読み込むため、特になにもすることはない。ただし、ライセンス認証時に入力したメールアドレスにはライセンス認証と同時にライセンスキーファイルが送られてくる。初回ライセンス認証時には不要だが、今後再インストールした際にはこのファイルが必要になるため、紛失しないよう保管してほしい。再インストール時には再度ライセンス認証を行う必要はなく、このファイルを読み込ませるだけで認証が終わる。従って、初回ライセンス認証時には、メールの受信できる有効なメールアドレスを入力しないとライセンスキーファイルが入手できないので気をつける必要がある。詳細は認証完了時にTurbolinuxから送信される「Turbolinux FUJI ライセンスファイル」というメールの中身に書かれているのでそちらを参照してもらいたい。

「FUJI」と「FUJI Basic」、どちらが買いか

 今回もまたフル機能の「FUJI」と「FUJI Basic」の二つがラインナップされた。用途別で導入することをお薦めする。

Turbolinux FUJI
 フル機能が実装されたコンプリート版。商用ソフトをはじめ、デスクトップ用途で使うのであればこちらをお薦めする。
Turbolinux FUJI Basic
 基本機能と最小限の商用そふとのみに限定されたパッケージ。とりあえずLinuxの勉強をしてみたい初心者の方、または自前でソフトウェアの開発やパッケージ作成を行ったり、足りない部分をすべて自分でどうにかしてしまうことができるパワーユーザ向けのパッケージ。実用マシンと開発マシンを別にする場合にはこちらがお薦めだ。

 既存ユーザには Turbolinux FUJI優待販売 もあるので、格安で入手したい既存ユーザはこちらから購入すると良いだろう。

総評

 TL10Dの後継OSということもあり、今まで以上に使いやすくなった。Windowsしか使ったことのないユーザでも気軽使えるよう敷居が低くなったのが特徴だ。主要コンポーネントの全面アップデートによる利便性の向上だけでなく、Turbolinuxならではの細かな配慮が光っているOSである。起動速度の向上もTurbolinuxが謳っているように、TL10Dより圧倒的に高速になっており、痒いところにうまく手の届いたバージョンである。新たなモジュール提供方法である「Turboプラス」を利用し、使用者それぞれが自分色のLinuxにするのが今以上に簡単になったのが非常に魅力的である。アプローチは違えど、Linuxを自分色に染めるという良さを、FUJIは利用者それぞれに教えてくれるに違いない。
 前バージョン「Turbolinux 10 Desktop」シリーズ同様、「Turbolinux FUJI」は筆者が自信を持ってお薦めする「珠玉のソフトウェア」を言えよう。

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注意点

 ※ 製品に VMware Workstation 5 for Linux、処女はお姉さまに恋してる、Windows 2003 Server Enterprise Edition、Alloyウィンドウデザイン、PowerDVD for Linuxは含まれません。別途導入してください。
 ※ 本記事の内容に関して Turbolinux に質問することはおやめください。また、筆者に対して質問することもおやめください。筆者は技術者ではなく単なるエンドユーザであるため、詳しいことは聞かれてもわかりません。
 ※ 本記事の内容は無保証です。間違っていてもお咎め無しと言うことで(苦笑


最終更新日時:2005/11/29 17:24:29